現在において、東野圭吾の小説はベストセラーになる秘訣や東野圭吾の生涯について多くの研究がなされている。推理小説の文学性と哲学性についてはキャンター ゲイリー・W(2015)は「東野圭吾のフィクションとその魅力」で、東野圭吾の小説を紹介し、面白い筋と緻密な論理を研究した。また、褚盟(2013)は「東野圭吾の小説がよく売れている原因について」で出版業の状況を考察し、そこから原因を論じた。
一方、現在においては、死生観についての研究が多く見られる。しかし、主に日本人の自殺傾向に目を向けて研究し、推理小説の死の描写の視点からの研究は不備な点があると思われる。
そこで、本論文は東野圭吾の作品における死の描写の文学性と哲学の意味を着目し、まず東野圭吾の作品の文化背景から、次に作品における死の描写の具体的な表現を分析し、最後に、作品における死の描写を哲学的に解読する。これを通じて、現代社会の状況を結びつけ、東野圭吾の独特な死生観を分析してみる。この独特な死生観を『容疑者Xの献身』の死の描写を例にし具体的に考察したい。
絶望の中に希望を追求し、死の中に生命の意味を探す。死の描写の研究は死の探求だけでなく、より重要なのは自由と信仰であろう。死に直面するこそ、生命の美しさを感じることができる。これは本論の目的である。
2。 東野圭吾の小説における死の描写の文化背景
2。1推理小説の発展文献综述
本節では、推理小説の発展が、東野圭吾の小説における死の描写の文化背景の一つとなっていることについて述べる。
世界初の推理小説は、一般的には1841年にエドガー・アラン・ポーの短編小説「モルグ街の殺人」だといわれている。権利と義務の体系が整い、司法制度や基本的人権がある程度確立した社会は、推理小説に欠かせない要素であろう。だから、19世紀のイギリスに推理小説は一世を風靡した。日本における推理小説は、探偵という概念が西洋から輸入された後で発展した。第二次世界大戦前の日本では、「本格」以外のものは「変格」というジャンルに分類された。第二次世界大戦後、社会階級と宗教の構造はすべて巨大な変化が発生した。現在、日本には推理小説は社会派、新本格ミステリ、叙述トリック、メタミステリなどさまざまな流派がある。
古典時期と黄金時代の推理小説の主人公は常に完璧な探偵である。これらの推理小説は探偵の世界を表す。これは死を越えて秩序がある素晴らしい世界である。ただ、二回の世界大戦を経て、人々にとっては、戦争と貧乏は最大の問題であり、平和な生活環境は一番望ましいものだと世間に訴えられるようになった。そして、推理小説の主人公のイメージは時代とともに変わった。主人公の探偵は邪悪な勢力と闘争し、社会構造の変動の下で秩序を引き続いて作り、悲観的な考え方を持った市民階級を慰める働きを果たした。