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第一章はこの作品が創作された昭和30年代の社会概観とそのような社会に女性生活状況と地位の変化を概述したいと思う。そして作者が女性を注目する原因を紹介する第二章は作品の中の三人の女性を具体的に分析し、悲劇的な結果をひきおこした社会原因と人物個人原因等の方面におけて分析する予定だ。第三章は作者が本作における男性と女性に対して別々の態度と女性に対して抱えている感情と期待を解明すると思う。
2.「ゼロの焦点」から見られる女性の地位
2.1社会背景から女性地位を見る
昔から、日本女性にとって、固定される役割があるといえるのだ。それは「良妻賢母」である。これはまず男性によって提唱された女性像であった。幕末から明治前期にかけて欧米留学や洋行を経験した為政者や啓蒙家たちは、欧米社会の進歩を一方で支えているのは、賢母として子供を育て、家庭を管理できる聡明な女性の存在であることを知る。これは一方家庭で女性の役割の重要性を指摘されたが、一方女性の働く舞台は家庭にこだわっていたといる現実も明らかにした。普通に女性は個人として人生の価値を実現しがたいと思われる。
大正期になると、職場を進出することを女の新しい生き方として認める気運が高まってきた。実際には、家族の生活難の故に職場につく場合が少なくなかったが、職場に自己実現の楽しさを見出す女性も増えてきた。職場を持っていれば、自分を枉げなくてすみ、自分の人生を自分の思ったように力いっぱい生きてきたと語る人もいる。
女たちの暮らしと意識は変わって新しい時代への予感のようなものがじわじわと生まれてきたのは戦後からだった。 占領軍の改革指令のトップにそろえてあるのは、婦人の解放であった。まず戦後初めての総選挙だ。婦人解放の具体的な実現として、日本の女性がはじめて国政参加への選挙権を行使する。83名という婦人の立候補者がある。そして、この選挙で39名の婦人の国会議員が選出された。これは女性にとって、初めての体験だった。それだけではなく、新憲法の制定に続く一連の法改正と改革の中で、女たちの生活の舞台も急速に塗り替えられていった。昭和二十二年の民法改正により、女たちの生活のすべてを厳しく縛ってきた家族制度は否定され、夫婦という対関係を中心とする「民主的」な家族像を作り出すための基盤が用意された。戦前の女性の低い社会的地位は、教育水準の低さに偏って教育内容にかかわっていたが、教育基本法の制定により、男女共学と男女平等教育がはじまった。働く女性のためには、男女同一労働、同一賃金の原則や母性保護規定。戦前期、長い年月の間、婦人運動が目標として来た制度改革のほとんどすべてが、こうして一夜のうちに実現されたのである。
その一方、１９５０年代末に始まる経済の高度成長とともに、都市を中心にサラリーマン家族の家族の数が急激な増加をとげた。その多くは核家族であり、夫は企業ではたらき、給料を得て、妻は家事、育児を担う主婦となった。それで、「家内」的存在となり、主婦としての役割の固定化が進むことになった。女性はまた結婚、出産で退職という悪循環を繰り返してしまった。この時、日本の女たちは固定観念につくられた苦境に陥って、家庭に一生を捧げているが、社会で自分の声を上げる機会をずっと探し続けていて、社会地位が徐々に上がっているのも明らかだ。「ゼロの焦点」はまさにこんな旧時代から新時代へ移り変えた時に作られた作品である。