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    認知言語学の視点から補助動詞の「〜テイク」「〜テクル」には多様な意・用法があり、日常会話において頻繁に用いられ、自然な日本語の表現の重要な一部分とされている。従って、本文では補助動詞の「~ていく」「~てくる」を中心に、話し手の視点が述語の選択にどのようにかかわっているのか、それを全体の問題として説明を試みる。

    1.1 認知言語学における視点

    認知言語学とは、「ゲシュタルト的な知覚、視点の投影・移動、カテゴリー化などの人間が持つ一般的な認知能力の反映として言語を捉えることによって、人間と言語の本質を探究する言語学の諸理論というものである」 。視点は物事の捉え方、いわば事態把握の仕方と共通している。久野(1978)は構文論に〈視点〉の概念を導入し、視点による制約的「視点的談話法規則」が構文法の分析に不可欠であることを述べた上で、話し手からの「共感度」の不等式を用いながら、授受動詞や移動動詞を例に論じた。そして、〈事態把握〉にはいくつかの型があり、言語によって好まれる型が異なると池上(2006)が述べている。具体的に、また〈客観的把握〉と〈主観的把握〉に分けられる。そして日本語話者には〈主観的把握〉が好まれる傾向が見られるという。

    1.2 先行研究

    視点の理論と補助動詞の「~てくる」「~ていく」の用法について以下のような研究が見られる。森山新(2006)では「客観的把握」と「主観的把握」の具体的表現及び把握の仕方から、日本語におけるの視点の置き方のルールを三つまとめた。清水啓子(2010)では日本語の移動動詞「来る」が文法化した「~てくる」構文のうちの逆行態の用法を中心に、「来る」との意的関連性、および文法化連鎖における周辺的な用法とのつながりを考察している。さらに類似する概念構造を持つ受動態構文と比較することで逆行態構文の概念特徴を明らかにしている。その他、牧内勝(1979)、渡辺誠治(2001)、内山潤(2001)などでは「~てくる」「~ていく」のアスペクト性の問題を中心に、補助動詞の文法構造を厳密に検討している。

    一方、中国の研究では、謝文儀(2008)では大江(1975)、久野(1978)、森田(2006)などの研究に基づき、「視点制約」「視点の一貫性」という概念から、本動詞の「来る」「行く」と比べた上で、補助動詞としての「~ていく」「~てくる」の意・用法を分析している。そのほか、守屋(1995)での「動詞テ形+末尾動詞」の意構造から考察を進め、張國峰(2014)では本動詞と「テ形動詞」の関係や用法などを詳しく論述している。

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