指示詞から見た日中両言語における視点の違い要旨指示詞は日本語を構成する部分として非常にに重要であるが、その分析はかなり複雑だという事実もある。本稿では、現在までの指示詞を中心に行った研究成果を列挙すると同時に、成果の問題点を発見し、視点という角度から日中両言語の指示詞を分析した。また、日本語と中国語の指示詞の選択条件を分析した上で、視点の違いをより一層明らかにした。51469
キーワード:指示詞 対比 視点 違い
目次
1.はじめに 1
2.先行研究 1
2.1指示詞コ・ソ・アについての研究の流れ 1
2.2現場指示詞の選択要因と文脈指示詞の選択要因 2
3.日本語の「コ・ソ・ア」と中国語の「这・那」の対応 3
3.1「コ」と「这」 3
3.2「ソ」と「那」 3
3.3「ア」と「那」 4
3.4本章のまとめ 4
4.指示詞の選択と視点 4
4.1日本語について 4
4.2中国語について 7
4.3日中両言語における視点の違い 8
5.おわりに 9
参考文献 10
1.はじめに
指示詞というのは、「指示代名詞」或いは「指示語」から来ている用語である。日本語の指示詞は、「コ・ソ・ア」の三系列で組み立てられていると考えても良い。しかし、日本語にひきかえ、中国語では、指示詞が「这」と「那」しかない。そのため、中国人の日本語学習者は日本語の指示詞の勉強に多大な困難をともなう。だが、複雑且つ難しい指示詞でも、それについての研究は、その成果が出つつある。しかし、これまでの研究成果を分析し、筆者は研究にまだ不十分な点を幾つか発見した。まず、「コ・ソ・ア」の選択及び機能には様々な説があるが、単一の説では説明できない場合がある。また、選択の基準は検討されたが、「視点」という概念に繋がる研究はまだ多くない。よって、視点と指示詞の関係を一層明らかにすることが本稿の目的である。
2.先行研究
2.1指示詞コ・ソ・アについての研究の流れ
一、佐久間(1951)――人称区分説
日本語の指示詞に関して最初の本格的な研究は佐久間によって確立された。佐久間は「コ・ソ・ア」の体系性に目をつけ、話し手(一人称)、聞き手(二人称)、それ以外(三人称)という人称の縄張りで、「コ・ソ・ア」を区別する「人称区分説」を主張した。
二、三上(1970)の二種二項対立説论文网
三上(1970)は、指示詞を含む「あちらこちら」「あれこれ」「そこここ」「そうこう」などの慣用表現にコ・アとソ・コの組み合わせはあるが、ソ・アの組み合わせがないことから、佐久間説を認めながらも、コ・ソ・アの三項対立の指示関係を否定し、コ・アとソ・コの二種二項対立の指示関係の見地をとった。
三、阪田(1971)――距離区分説
場所を示す単語、例えば「そこ」「そのへん」や、道を教えるときに使う「そこ」などのソ系には、中距離指示といっても差しつかない特徴があると考えられる。つまり、現場指示におけるソ系の用法を人称区分説的な原理だけで説明することには無理があるということである。