しかし、日本人の「恩」意識を系統立てて、詳しく分析し、論述した人はアメリカ人のベネディクトである。第二次世界戦争の終わるか終わらないかの時、米国は武装の手段で強引にドイツナチを圧倒し、ヨーロッパ戦場を終えたが、アジア戦場の侵略方とした日本に対してどのような対策を取ったらよいか分からなかった。そして、米国人のベネディクトは米国政府に頼まれ、日本人の研究をし始めた。当時、米国と日本は敵国で、激しく戦っていた。彼女は自ら日本へ考察に行くことができなかったが、日本の文学作品を読み、日本の映画を見に行き、日本から帰ってきたアメリカ人とアメリカに生活している日本人と交流した、いよいよ『菊と刀』という作品が書き上がった。この著作の中で、ベネディクトは日本人の罪悪感、恩と義理などの独特の精神を詳しく説明した。ベネディクトは恩の定義、種類、恩与えと恩返しの行動を考察し、日本人の恩意識の普及程度と重要性を表した。恩と義務、義理の関係をアメリカ人に理解しやすい債務関係に喩え、詳しく解釈した。
3 恩について
3.1 恩の定義
「恩」は儒教思想の「仁」の範疇に属し、東洋文化だけの概念だ。だから、英語の中で「恩」に当たる言葉はない。『菊と刀』の著者アメリカ人のベネディクトは「恩」について、次のように記述している。「日本語には英語の‘obligation’を意するさまざまな言葉がある。ある人の負っている債務のすべてを言い表す‘obligation’に当たる言葉は「恩」である。‘恩’の使い方は英語の‘obligation’、‘loyalty’、‘kindness’、‘love’に似ているが、‘恩’の原意を歪めるかもしれない。もし‘恩’は本当に愛あるいは義務を意するものであるとするならば、日本人は‘子供に対する恩’ということもできるはずであるが、そういう文法は不可能である。」