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日本における本格的な観光の歴史は、1893年に日本を訪れる外国人をもてなすことから始まった。明治政府が欧米列強に同意する政策の一環であった。1964年には、東京から新大阪までの東海道新幹線が開通すると同時に、東京オリンピックも開催され、多くの外国人観光客が日本へやってきった。この年に訪れた外国人旅行客の数は、35万人を超えた。また日本においても海外渡航が自由化され、海外へ出国した数は12万7千人、このうち観光を目的とした旅行者は2万3千人までに昇った。この時代、海外旅行はまだ一部の富裕層のみが許される贅沢なものだったが、旅行会社の「旅行商品」の開発は、この年以降大きく発展していった。
現在の日本では、観光産業とは、観光に関連する業種の総称をいう。旅行業、宿泊業、飲食業、運輸業、製造業など極めて多岐にわたるため、日本標準産業分類では業種として分類されていない。
環境汚染がほとんどなく、関連する産業が多く、外国観光客の消費など、様々なメリットがある観光産業は、国のソフトパワーと文化交流手段中の一つとして、もっとも重視されている。また、地域振興における観光産業は、地域での交流人口を増やし、経済発展を促進し、各地域間の文化の交流など、各方面から地域振興を促進する重要な作用がある。
さらに日本国内では、近年観光客の観光ニーズが、物見から体験へと変化している。個人的志向が多様化し、「知る」、「学ぶ」、「体験する」という観光志向が高まっている。この結果、産業観光が発展した。
１-２.産業観光について
『観光学辞典』注１）によると、産業観光は「1950年にフランスの経営者が輸出の振興を図るため、外国人の産業施設視察に便宜を与えるよう、産業界に呼びかけ、受け入れ態勢の整備と宣伝、斡旋の制度を始めた」ことに由来している。
観光産業が日本で初めて展開されたのは、1960年代である。当時、日本の企業は社会の公害問題への反省、製品に関する信頼性や安全性などを顧客に展示するため、企業イメージの向上などを意識して工場見学コースが設計された。その後、様々な産業が観光産業の対象として捉えられた。
産業観光は、日本で最初に産業観光の実践が提唱された「全国産業観光サミットin愛知名古屋」（2001年開催）において「歴史的·文化的に価値ある工場や機械などの産業文化財や産業製品を通じて、ものづくりの心にふれることを目的とした観光をいう」と定義された。日本では、東海旅客鉄道初代会長の須田寛が初めて提唱したという。「何のために産業観光を行うのか」、「どのような来訪者を主な受け入れ対象とするか」。いわゆる、産業観光の主体、目的は産業観光を始めるにあたり最も重要なことであると言える。注２）
日本の観光産業の研究者は、外国の産業観光の成功の例を挙げている。成功の例の共通点は、「本物」のインパクトだろう。そこに「地域街づくり」の観点があり、産業技術を「遊ぶ」演出と「人」の活躍があるところに、出会いの感動と充足感が深まることを示している。
まず、産業観光の基盤は地域の街づくりである。地域の整備によって、住民の愛と誇りが育ち、ものづくりを核とした地域ブランドの国内外への発信によって、新たな交流と経済効果がもたらされることを期待したい。